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2016年 7月 5日
平成27年度第2回(2016年1月実施)電気通信主任技術者試験の「線路設備及び設備管理」の問1(1)の文章題の過去問です。
光損失は、「伝送交換設備及び設備管理」や「伝送」でも、触れられるテーマです。
出題は、下のとおりです。アンダーラインの部分の(ア)~(エ)に適した番号を選ぶ問題です。
光損失はその発生メカニズムの違いにより、光ファイバ固有の損失と光ファイバを実際に通信システムに組み入れたときに生ずる損失とに大別される。 前者には、吸収損失、レイリー散乱損失などがあり、後者には、曲げによる放射損失、接続損失などがある。
吸収損失には、石英系ガラスが本来持っている固有の吸収によるものと、 石英系ガラス内に含まれている不純物によるものとがある。前者のうち、 光のエネルギーが石英系ガラス分子の振動エネルギーとして吸収されることにより生ずる(ア)吸収損失は、 波長10μm近傍にその損失ピークを持つ。
レイリー散乱損失は、光がその波長と比較してあまり大きくない物質に当たったときに、 その光が様々な方向に進んでいく現象により生ずるものであり、(イ)に反比例する。 曲げによる放射損失は、曲げられた光ファイバ中において入射角が臨界角以上となる光が放射されるために生ずるものである。 光ファイバの曲げによる放射損失を低減するには、一般に、(ウ)を大きくすることが有効であり、 これを実現した許容曲げ半径が15mmなどの光ファイバ心線を用いた光ファイバケーブルが アクセス系の架空線路区間やユーザ引込み区間に導入されている。
接続損失には、接続する光ファイバのコアどうしの中心軸がずれている場合、 一方のコアから出た光の一部が他方のコアに入射できず放射されて生ずる損失がある。 また、コアどうしの接続部に微小な空隙が存在する場合には反射が生ずる。 この現象は、石英系ガラスと空気の屈折率の違いに起因するもので、一般に、(エ)といわれ、接続損失が生ずる要因の一つとなる。
① ブラッグ反射 | ② OH基 | ③ 波長の2乗 |
④ 赤外 | ⑤ 周波数の2乗 | ⑥ コア非円率 |
⑦ 波長の4乗 | ⑧ ラマン散乱 | ⑨ 周波数の4乗 |
⑩ フレネル反射 | ⑪ 金属 | ⑫ 紫外 |
⑬ コアとクラッドの非屈折率差 | ⑭ ブリルアン散乱 | |
⑮ コア/クラッド偏心料 | ⑯ モードフィールド径 |
(ア) ④ 赤外 | (イ) ⑦ 波長の4乗 |
(ウ) ⑬ コアとクラッドの非屈折率差 | (エ) ⑩ フレネル反射 |
光損失はその発生メカニズムの違いにより、光ファイバ固有の損失と光ファイバを実際に通信システムに組み入れたときに生ずる損失とに大別される。 前者には、吸収損失、レイリー散乱損失などがあり、後者には、曲げによる放射損失、接続損失などがある。
吸収損失には、石英系ガラスが本来持っている固有の吸収によるものと、 石英系ガラス内に含まれている不純物によるものとがある。前者のうち、 光のエネルギーが石英系ガラス分子の振動エネルギーとして吸収されることにより生ずる赤外吸収損失は、 波長10μm近傍にその損失ピークを持つ。
レイリー散乱損失は、光がその波長と比較してあまり大きくない物質に当たったときに、 その光が様々な方向に進んでいく現象により生ずるものであり、波長の4乗に反比例する。 曲げによる放射損失は、曲げられた光ファイバ中において入射角が臨界角以上となる光が放射されるために生ずるものである。 光ファイバの曲げによる放射損失を低減するには、一般に、 コアとクラッドの比屈折率差を大きくすることが有効であり、 これを実現した許容曲げ半径が15mmなどの光ファイバ心線を用いた光ファイバケーブルが アクセス系の架空線路区間やユーザ引込み区間に導入されている。
接続損失には、接続する光ファイバのコアどうしの中心軸がずれている場合、 一方のコアから出た光の一部が他方のコアに入射できず放射されて生ずる損失がある。 また、コアどうしの接続部に微小な空隙が存在する場合には反射が生ずる。 この現象は、石英系ガラスと空気の屈折率の違いに起因するもので、 一般に、フレネル反射といわれ、接続損失が生ずる要因の一つとなる。
光損失に関する基本的な事項の問題です。特に捻った部分もない素直な問題です。 このような問題は重要な得点源になるので、しっかりと押さえたい問題です。
まず1つ目の段落です。
光損失はその発生メカニズムの違いにより、光ファイバ固有の損失と光ファイバを実際に通信システムに組み入れたときに生ずる損失とに大別される。 前者には、吸収損失、レイリー散乱損失などがあり、後者には、曲げによる放射損失、接続損失などがある。
光損失は、損失要因によって、下の表のように分類されます。
損失要因 | 損失特性 |
|
---|---|---|
材料要因 | 吸収 | 不純物吸収、赤外吸収、紫外吸収 |
散乱 | レイリー散乱、誘導ラマン散乱、誘導ブリルアン散乱 | |
外部要因 | 構造不均一による損失、曲り損失、接続損失、結合損失 |
問題文にある「光ファイバ固有の損失」の要因は材料要因、 「光ファイバを実際に通信システムに組み入れたときに生ずる損失」の要因は構造要因と、 それぞれ呼ばれます。材料要因による損失は、さらに吸収と散乱に分けられます。 吸収とは、他の物質を通過する際に、その物質内に取込まれることです。また、散乱とは、 他の物質を通過する際に、光が進行方向を変化させることです。
2つ目の段落です。
吸収損失には、石英系ガラスが本来持っている固有の吸収によるものと、 石英系ガラス内に含まれている不純物によるものとがある。前者のうち、 光のエネルギーが石英系ガラス分子の振動エネルギーとして吸収されることにより生ずる赤外吸収損失は、 波長10μm近傍にその損失ピークを持つ。
「石英系ガラスが本来持っている固有の吸収による」損失には、赤外吸収損失と紫外吸収損失があります。 それぞれ、赤外線の波長での吸収による損失と、紫外線の波長での吸収による損失です。 目に見える可視光線の波長の範囲が、400~760 nmなので、これより波長が短い波長の電磁波が紫外線、 波長が長い波長の電磁波が赤外線です。
赤外吸収は、波長1,500 nm(=1.5μm)くらいから顕著に現れ、 正確には波長9,100 nm(=9.1μm)近辺でピークとなります。長波長領域での、主要な損失要因です。
一方の紫外吸収は、波長が400 nm以下で現れる損失です。 光伝送で使う波長は、短波長と呼ばれる場合でも、850 nmです。 そのため、紫外吸収は他の損失に比べると非常に小さいので、その影響は無視できる程度です。
「石英系ガラス内に含まれている不純物による」損失には、OH基イオン(水酸化物イオン)による吸収損失と、 遷移金属による吸収損失があります。
OH基イオンによる吸収は、以前は光ファイバにおける主要な吸収でした。 光伝送での波長は、850 nm、1,310 nm、1,550 nmが使われますが、 これはOH基イオンの吸収が少ない波長から選ばれています。 なお、近年では、OH基イオンによる吸収損失は、大きく低減されています。
OH基イオンは、水素ガスの浸透により生成されることもあります。そのため、 光ファイバへの水素ガスの浸透や、光ファイバ周囲での水素ガスの発生を防いでいます。
遷移金属による吸収損失は、ガラスに混入した金属イオンの電子遷移が原因で生じる吸収です。 現在では、原料の純化による金属イオンの除去が進み、無視できる程度になっています。
3つ目の段落です。
レイリー散乱損失は、光がその波長と比較してあまり大きくない物質に当たったときに、 その光が様々な方向に進んでいく現象により生ずるものであり、波長の4乗に反比例する。 曲げによる放射損失は、曲げられた光ファイバ中において入射角が臨界角以上となる光が放射されるために生ずるものである。 光ファイバの曲げによる放射損失を低減するには、一般に、 コアとクラッドの比屈折率差を大きくすることが有効であり、 これを実現した許容曲げ半径が15mmなどの光ファイバ心線を用いた光ファイバケーブルが アクセス系の架空線路区間やユーザ引込み区間に導入されている。
レイリー散乱損失は、短波長領域での主要な損失要因です。散乱の大きさは、波長の4乗に反比例するので、 波長が短くなるほど、急激に大きくなります。光伝送で使える波長は、短波長側はレイリー散乱損失、 長波長側では赤外吸収で制限されます。 実は、レイリー散乱は、身近かな現象です。空が青くみえるのも、 夕焼け空が赤いのも、遠くの山が青く見えるのも、レイリー散乱により青い光が散乱されるのが原因です。
曲げによる放射損失(曲り損失)は、曲げが原因で発生する損失です。 光ファイバにおける光は、コアとクラッドの屈折率の違いにより、光が全反射を繰り返して伝播します。 全反射するためには、入射角(光の進行方向が光ファイバとなす角)が、臨界角と呼ばれる角度より小さくなければなりません。 しかし、曲げが加わると、入射角の変化や、圧力により屈折率が変化し臨界角が変化します。これにより、 光が全反射せずにクラッドに突き抜けてしまいます。これが曲げ損失です。
臨界角θc と比屈折率差Δの間には、式(1)の関係があります。
sin θc = √(2 Δ)
したがって、比屈折率差を大きくすると臨界角も大きくなり、曲り損失も発生しにくくなります。
比屈折率差を大きくして曲げに強くしたものが、R15mm光ファイバ心線です。光ファイバ心線の許容曲げ半径は、 通常 30 mmです。これに対してR15mm光ファイバ心線は、その名が示すとおり、許容曲げ半径が15 mmとなっています。 そのため、ケーブルの引き回しがしやすいため、問題文にあるようにアクセス系で多く使われています。
4つ目の段落です。
接続損失には、接続する光ファイバのコアどうしの中心軸がずれている場合、 一方のコアから出た光の一部が他方のコアに入射できず放射されて生ずる損失がある。 また、コアどうしの接続部に微小な空隙が存在する場合には反射が生ずる。 この現象は、石英系ガラスと空気の屈折率の違いに起因するもので、 一般に、 フレネル反射といわれ、接続損失が生ずる要因の一つとなる。
接続損失とは、接続損失は、光ファイバ相互の接続に起因する損失です 接続損失の原因には、接続部分に軸ずれや角度ずれがあります。 その他には、スポットサイズ(光が照射する範囲)に違いがある場合にも発生します。
接続損失と混乱しやすい損失に、結合損失があります。結合損失は、 光ファイバと光素子の接続に起因する損失です。 光ファイバと光素子の結合部分では、出射された光がすべて入射できないことがあります。そのために発生する損失が、 結合損失です。 結合損失は、受光素子より発光素子で、顕著に発生します。これはコアの断面積が、 発光素子の発行面積より小さいためです。
フレネル反射とは、屈折率が異なる媒体間の境界面で発生する反射です。 コネクタ接続において、光はコアから空気中へ、そして空気中からコアへと、2回のフレネル反射をします。 そのためコネクタ接続における接続損失は、融着法やメカニカル法の場合より大きくなります。なお、 メカニカル接続において、屈折率整合剤を使うのは、フレネル反射を押さえるためです。
試験に出題されるキーワードは、覚えるしかありません。 しかし、丸暗記は味気ないだけでなく、記憶の定着もあまりよくありません。 いろいろな事項を関連付けて覚えたほうが、ボリュームは増えるように見えますが、結果的には効率が上がります。
関連付けという点では、基本的なキーワードは非常に取り組みやすくなっています。 基本的であるため、さまざまな場面で言葉が使われるためです。 たとえば、全セクション「接続損失とフレネル反射」では、フレネル反射について、光コネクタの接続方法と関連づけて説明しています。 フレネル反射とレイリー散乱を合わせれば、損失測定法のひとつであるOTDR法と関連付けて整理することもできます。
関連付けを行うことにより、多くの場合は、具体例に触れることになります。損失に関するキーワードならば、 そのキーワードが何かだけでなく、どのように影響するか、どのような面に応用されているかなど、合わせて整理することができます。 それによりキーワードの抽象的なイメージを、具体化していく効果もあります。 イメージが具体化すれば、記憶の定着度も高まります。
ぜひ、基本的なキーワードは、周りと関連づけて整理してください。 そのほうが、学習効率がアップするはずです。