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電気通信主任技術者試験 過去問解説 第13回

デジタル同期技術



電気通信
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伝送 無線 交換 データ
通信
通信
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通信
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通信
土木
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線路

◆問題

平成28年度第1回(2016年7月実施) 電気通信主任技術者試験の「伝送」の 問1 (2)(ⅱ)の過去問です。平成25年度第1回(2013年7月実施)にも、 同様の問題が出題されています。

出題は、下のとおりです。アンダーラインの部分の(カ)に適した番号を選ぶ問題です。

デジタル同期技術などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、 (カ)である。

網同期は、デジタル伝送路網全体のデジタル信号のクロックを一致させることであり、 多方向から受信した信号の周波数が互いに合致していれば、 受信した信号をバッファメモリに導き、フレーム信号を抽出することにより、 フレーム位相の同期をとることができる。
スタッフ同期多重では、複数の入力信号を、 それらのどの入力信号よりも僅かに速い速度の共通のクロック信号で読み出し、 入力信号との差に応じた余剰パルスを除去するデスタッフ操作により、 各入力信号を同期させた後に多重化している。
フレーム同期復帰過程において、 フレーム同期信号と一致するパターンを検出したとき、 本来のフレーム同期信号なのか、偶然一致しただけなのかを識別するため、 連続する数フレームにわたってパターンが一致したとき初めて同期がとれたと判断する方法は、 前方保護といわれる。
位相同期多重において、多重化された信号のままでは、 その中の特定チャネルを直接識別することができないため、 特定チャネルの分離及び挿入を行う際には、 常にチャネル単位に多重及び分離が行われる。

◆解答

正しい選択肢は、①です。

◆解説

◇同期技術の概要

デジタル信号における同期とは、ビットやフレームのタイミングを揃えることです。 同期によって、1ビットまたは1つのフレームが信号のどこからどこまでなのかを、識別することができます。 同期は、同期の対象がビットかフレームかによって、ビット同期技術とフレーム同期技術に分類されます。

ビット同期技術には、以下の方式があります。

  • 網同期
  • スタッフ同期

そしてフレーム同期技術には、以下の方式があります。

  • 調歩同期
  • キャラクタ同期
  • フラグ同期

◇選択肢①

選択肢①は、正しい文章です。

網同期は、デジタル伝送路網全体のデジタル信号のクロックを一致させることであり、 多方向から受信した信号の周波数が互いに合致していれば、受信した信号をバッファメモリに導き、 フレーム信号を抽出することにより、フレーム位相の同期をとることができる。

網同期とは、ビット同期のひとつです。網全体でクロックを同期させることにより、ビット同期を実現します。 なお、網同期には、同期をとる方式の違いにより、独立同期、相互同期、従属同期の3方式があります。 日本国内の交換網では、従属同期方式が採用されています。

◇選択肢②

選択肢②は、誤った文章です。正しくは、以下のようになります。アンダーライン部分が、誤っていた部分です。

スタッフ同期多重では、複数の入力信号を、 それらのどの入力信号よりも僅かに速い速度の共通のクロック信号で読み出し、 入力信号との差に応じた余剰パルスを挿入するスタッフ操作により、 各入力信号を同期させた後に多重化している。

時分割同期では、入力信号のビット同期が取れている必要があります。 スタッフ同期は、時分割多重化の際に、ビット同期をとるために使われます。

スタッフ同期では、同期後のクロック周波数は、入力信号のクロック周波数より、 わずかに高くします。そのため、入力のビットが足らなくなるため、ダミーのパルスを挿入します。 このダミーのパルスをスタッフパルス、スタッフパルスを挿入する処理はスタッフ操作と呼ばれます。

スタッフ処理の図

なお、「スタッフ」は、SDHにおいても登場する用語です。 SDHでは、スタッフ操作と、その逆のデスタッフ操作があります。詳細は、別の機会にいたします。

◇選択肢③

選択肢③は、誤った文章です。正しくは、以下のようになります。アンダーライン部分が、誤っていた部分です。

フレーム同期復帰過程において、 フレーム同期信号と一致するパターンを検出したとき、 本来のフレーム同期信号なのか、偶然一致しただけなのかを識別するため、 連続する数フレームにわたってパターンが一致したとき初めて同期がとれたと判断する方法は、 後方保護といわれる。

問題文では、「前方保護」とあった部分が、正しくは「後方保護」です。

フレーム同期復帰とは、同期状態の判定を正しく行うための処理です。フレーム同期はずれの状態から、 フレーム同期の状態に戻させる処理なので、フレーム同期復帰と呼ばれます。フレーム同期保護と呼ばれることもあります。

同期状態を判定する方式には、前方保護と後方保護の2つの方式があります。

前方保護は、同期はずれの検出を正しく行うための技術です。同期符号を複数回検出できない場合に、同期外れとみなします。

これに対して後方保護は、同期の検出を正しく行うための技術です。同期符号を複数回検出できた場合に、 同期とみなす方式す。

いずれも複数回の同期符号の照合を行うことにより、同期の判別を正しく行えるようにしています。

◇選択肢④

選択肢④は、誤った文章です。アンダーライン部分が、誤りです。

位相同期多重において、多重化された信号のままでは、 その中の特定チャネルを直接識別することができないため、 特定チャネルの分離及び挿入を行う際には、 常にチャネル単位に多重及び分離が行われる。

位相同期多重とは、フレームの位相を合わせたあとに多重化する方式です。多重化装置では、多重化に先立ち、 それぞれのチャネルの1フレーム分の信号を記憶します。

位相同期多重のメリットのひとつは、多重化前の個々のチャネルが多重化後も個々に識別できることです。 そのため多重化したままで、分離や挿入ができます。

◇フレーム同期の各方式

この問題では、ビット同期の2方式について触れていますが、フレーム同期の3方式については触れていません。 そこで、以下ではこの3方式について補足します。

●調歩同期

調歩同期方式は、8ビットの情報の前後に、同期のためのビットを付加する方式です。 8ビット単位なのは、8ビットは半角英数字1文字分だからです。 8ビット単位の開始を示すために付加されるビットはスタートビット、 終了を示すため付加されるビットはストップビットと呼ばれます。

調歩同期方式では、データが無い場合は回線の状態が1に保たれています。 スタートビットにより値が1から0へ変化することで、データの送信開始が識別されます。 また、ストップビットの値を1にすることで、データの送信終了時に回線の状態を必ず1に戻しています。

調歩同期の図

●キャラクタ同期

キャラクタ同期方式は、SYNと呼ばれる同期用の制御キャラクタを使う方式です。 キャラクタとは、文字のことです。SYNを使うSYN同期方式とも呼ばれます。SYNは、synchronizeのSYNです。 なお、制御キャラクタとは、通信や機器の制御のために使われる特殊な文字です。 タブやバックスペースも、制御キャラクタのひとつです。これらは表示を制御しますが、文字として表示することはできません。

キャラクタ同期方式は、8ビット単位の文字情報を伝送する場合限定での同期方式です。 いわゆるバイナリデータの伝送には適用できません。

キャラクタ同期方式では、データを送信する場合は、データの先頭にSYNが付加されます。 方式によっては、データの先頭と終端を識別するために、STXやETXと呼ばれる制御キャラクタが付加されます。 または、フレームの先頭を確実に識別するために、SYNが重ねて付加される場合もあります。

下の図は、代表的なキャラクタ同期方式の例です。

キャラクタ同期の図

●フラグ同期

フラグ同期方式は、フレームの区切りに、特定のビットパターン(2進数で0111 1110)を使う方式です。 この特定のビットパターンは、フラグパターンと呼ばれます。

フラグ同期の図

しかし単純にフラグパターンを定めただけでは、正しく伝送できません。 データ中にフラグパターンと同じビット列(0111 1110)があると、フレームの区切りと誤って識別されてしまうためです。 したがって、このままではフラグパターンと同じビット列を伝送することはできません。

一般に、通信にはビット透過性(BSI)が求められます。 ビット透過性とは、ビットの並びに関わらず、伝送が正しく行える性質です。 つまり、フラグパターンを定めただけでは、ビット透過性が確保されていないのです。

そこでフラグ同期では、次のような工夫が加えられています。 ここで、フラグパターンのビットの並び、6個連続する1の両側に0があることが、役に立つのです。 フラグ同期に加えられた工夫とは、データ中に5ビット以上の1が連続する場合は、送信側で0を挿入することです。 受信側では5ビット連続の1の後に0がある場合に0を除去することで、挿入された0を除去します。 フラグ同期ではこの0の挿入処理により、ビット透過性を確保しているのです。

フラグ同期における0の挿入の図

このフラグ同期は、HDLCというプロトコルに採用されています。 そしてHDLCは、ISDNのレイヤ2のプロトコルであるLAPBやLAPD、TCP/IPのPPP、SDHにおけるPOS(Packet Over SONET/SDH)など、 さまざまな技術のベースとなっています。

◇どこまで学習範囲を広げるか

今回の解説では、フレーム同期の各方式まで話題を広げました。 独学で学習を進めている場合は、どこまで広げるかは、悩ましい点です。

あまり時間を書けずに済むのならば、キーワードを押さえるだけでも、話題を広げることをお勧めいたします。 直接的な解答力向上の面もありますが、各大問の(1)の語句選択式のダミー選択肢に出てきたときに、 余計な迷いを抱かずに済むメリットもあります。

もし学習のための調査に時間がかかりそうならば、過去問での登場頻度で判断してください。 過去問のPDFは検索可能な形式になっています。 そのため、複数ファイルから一気に特定のキーワードを検索することができます。 しかし、検索結果がそのまま出題とは早合点しないでください。 検索結果の中には、ダミー選択肢のキーワードも含まれています。必ず検索された文章まで確認してください。

また、学習範囲を広くとることも大事ですが、一歩深い学習も忘れないようにしてください。

このページの図は、日本理工出版会刊「伝送交換設備及び設備管理-専門科目(伝送・交換)にも対応」の一部を、 著作者と出版社の許諾を得て使用しています。