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2017年 1月 19日
平成27年度第2回(2015年1月実施)電気通信主任技術者試験の「線路設備及び設備管理」の 問2 (2)(i)と(2)(ii)の過去問です。
出題は、下のとおりです。アンダーラインの部分の(オ)と(カ)に適した番号を選ぶ問題です。
(i) | 電線共同溝の概要について述べた次の文章のうち、誤っているものは、(オ)である。 |
① | 電線共同溝とは、電線共同溝の整備等に関する特別措置法に基づき、電線の設置及び管理を行う2以上の者の電線を収容するため、道路管理者が道路の地下に設ける施設をいう。 |
② | 電線共同溝は道路の地下空間を利用し、電力線、通信線などの電線類を、主に歩道下に共同収容することにより、道路の構造の保全を図りつつ、安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備を図ることを目的としている。 |
③ | 電線共同溝には、電気事業者、電気通信事業者、CATV事業者、有線ラジオ放送事業者など、電線管理者の電線を収容できるが、道路管理用ケーブルその他の行政用のケーブルを収容することはできない。 |
④ | 電線共同溝の種類は、管路の設置位置や構造面から浅層埋設方式と従来方式に大別される。浅層埋設方式には、小型トラフの採用による浅層化、共用FA方式の採用及びボディ管の使用による集約化などを図ったものがある。 |
(ii) |
情報BOXの概要について述べた次のA~Cの文章は、(オ)である。 |
A | 情報BOXは、道路高度情報サービスの基盤設備として、道路情報の提供やITS(高度道路交通システム)推進などの目的で、道路管理用光ファイバケーブルを収容するために道路管理者が設置している。 |
B | 情報BOXには、複数の光ファイバケーブルを布設することが可能なことから、道路管理者の占用許可を得れば、情報BOXの空き管路は電気通信事業者なども利用することができる。 |
C | 情報BOXへ入溝する事業者は、一般に、利用料として工事費のみを負担すればケーブルを入線することができるため、単独地中化の工事費と比較して、安価に管路ルートを確保することができる。 |
① Aのみ正しい | ② Bのみ正しい | ③ Cのみ正しい | |
④ A、Bが正しい | ⑤ A、Cが正しい | ⑥ B、Cが正しい | |
⑦ A、B、Cいずれも正しい | ⑧ A、B、Cいずれも正しくない | ||
⑦ A、B、Cいずれも正しい | |||
⑧ A、B、Cいずれも正しくない |
(オ):誤っている選択肢は、③です。
(カ):正解は、「④ A、Bが正しい」です。
この問題のテーマは、(i)が電線共同溝、(ii)が情報BOXです。
通信土木分野からの出題です。弊社テキストの章立てでは、「線路設備及び設備管理」における 通信土木の出題割合は、 16%を越えています。その通信土木の中でも、電線共同溝は比較的出題が多いテーマです。
電線共同溝は、無電柱化の整備手法における代表的な手法です。 無電柱化の整備手法は、電線類地中化と電線類地中化以外の手法に、大きく分けられます。 電線共同溝は、電線類地中化の手法のひとつです。 無電柱化の整備は、電線共同溝方式を基本として進られています。 そのため、他の無電柱化の整備手法に比べ、出題頻度は高くなっています。
電線共同溝方式による無電柱化は、現場の状況によっては困難な場合もあります。 そのような場合には、他の電線類地中化の手法が検討されます。 これも難しい場合に、電線類地中化以外の手法が検討されます。
無電柱化の整備手法の体系を、下の図に示します。
これに対して、情報BOXは道路管理用光ファイバケーブルを収容する施設として、道路管理者が設置するものです。 情報BOXに空き空間がある場合、電気通信事業者などが占有料を支払って、ケーブルを入溝します。
(i)の選択肢①は、正しい文章です。
電線共同溝とは、電線共同溝の整備等に関する特別措置法に基づき、電線の設置及び管理を行う2以上の者の電線を収容するため、道路管理者が道路の地下に設ける施設をいう。
電線共同溝の整備等に関する特別措置法 第二条 第3項では、「電線共同溝」を以下のように定義しています。
この法律において「電線共同溝」とは、電線の設置及び管理を行う二以上の者の電線を収容するため道路管理者が道路の地下に設ける施設をいう。
上記のように、特別措置法によって、以下の点が規定されています。
(i)の選択肢②は、正しい文章です。
電線共同溝は道路の地下空間を利用し、電力線、通信線などの電線類を、主に歩道下に共同収容することにより、 道路の構造の保全を図りつつ、安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備を図ることを目的としている。
電線共同溝は、電線の地中化の実現方法の代表のひとつです。 「電線」の付かない共同溝なるものもありますが、これは電線専用ではなく、水道管やガス管もいっしょに入れられます。 水道管やガス管の場合のメリットは、掘り返しの工事をすることなくメンテナンスが可能になる点です。 これに対して電線の場合は、無電柱化による以下のメリットがあります。
そして、電線共同溝の整備等に関する特別措置法の目的は、第一条で、以下のように規定されています。
この法律は、電線共同溝の建設及び管理に関する特別の措置等を定め、特定の道路について、電線共同溝の整備等を行うことにより、 当該道路の構造の保全を図りつつ、安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備を図ることを目的とする。
上記のアンダーライン部分が、選択肢の文章の後半部分になっています。
(i)の選択肢③は、誤った文章です。
電線共同溝には、電気事業者、電気通信事業者、CATV事業者、有線ラジオ放送事業者など、電線管理者の電線を収容できるが、 道路管理用ケーブルその他の行政用のケーブルを収容することはできない。
アンダーライン部分が誤りです。電線共同溝の整備等に関する特別措置法には、行政用ケーブルを除外する規定はありません。
電線共同溝は、以下の流れで建設されます。
なお共同溝の収容能力に余裕がある場合、道路管理者は当初の占用予定事業者以外の事業者に占用の許可を与えることもできます。
(i)の選択肢④は、正しい文章です。
電線共同溝の種類は、管路の設置位置や構造面から浅層埋設方式と従来方式に大別される。浅層埋設方式には、 小型トラフの採用による浅層化、共用FA方式の採用及びボディ管の使用による集約化などを図ったものがある。
電線共同溝の構造には、従来方式と浅層埋設方式の2方式があります。 コスト削減のために、従来方式に比べコンパクトな形にしたものが、浅層埋設方式です。 浅層埋設方式は低コストであるため、無電柱化推進計画では標準の方式となっています。
問題文では、浅層埋設方式の具体的な3方式が挙げられています。この中の共用FA方式について補足します。 共用FA方式は、共用フリーアクセス方式の略です。 従来の電線共同溝では、配線ケーブルを各通信事業者がごとに1管1条で配管していました。 これに対して共用FA方式では、各通信事業者がフリーアクセス管1管を共用しています。 これにより共用FA方式は、従来のフリーアクセス方式に比べ設備のコンパクト化を実現しています。
(ii)の選択肢Aは、正しい文章です。
情報BOXは、道路高度情報サービスの基盤設備として、道路情報の提供やITS(高度道路交通システム)推進などの目的で、 道路管理用光ファイバケーブルを収容するために道路管理者が設置している。
情報BOXは、道路管理用光ファイバケーブルを収容する施設として、道路管理者が設置するものです。 従来は、道路管理者は道路管理用光ファイバを収容するために、複数の管路を布設してきました。 情報BOXは、これらの管路をひとつの空間に構造変更し、光ファイバケーブルを布設するためにその内部を区分したものです。
このような経緯なので、元々は、情報BOXは電気通信事業向けとして、設置されたものではありません。
(ii)の選択肢Bは、正しい文章です。
情報BOXには、複数の光ファイバケーブルを布設することが可能なことから、道路管理者の占用許可を得れば、 情報BOXの空き管路は電気通信事業者なども利用することができる。
選択肢Aの説明にあるように、情報BOXは複数の管路で布設されていた道路管理用光ファイバを、 まとめて収容するためのものです。その内部は、光ファイバケーブルを布設しやすいように区分されています。
情報BOXの空き空間がある場合、電気通信事業者は道路管理者の許可を得ることにより、 情報BOXの空き空間の一部を占用することができることになっています。
(ii)の選択肢Cは、誤った文章です。正しくは、以下のとおりです。下線部が誤っていた部分です。
情報BOXへ入溝する事業者は、一般に、利用料として占有料のみを負担すればケーブルを入線することができるため、 単独地中化の工事費と比較して、安価に管路ルートを確保することができる。
選択肢Aの説明にあるように、情報BOXは、道路管理用光ファイバケーブルを収容する施設として、道路管理者が設置するものです。 したがって、ケーブルを入溝する事業者が、工事費を負担することはありません。
問題文にある「単独地中化」は、電線類地中化の手法のひとつです。全額を電線管理者が費用負担する方式です。 管路等は、電線管理者が道路占用物件として管理します。
電線共同溝は、C.C.BOXとも呼ばれます。C.C.BOXと情報BOXでは、どちらもナントカBOXとなり、 名前が似ています。当然、今まで出題の中には、C.C.BOXと情報BOXの混乱を突いてくるような出題もありました。
たとえば、費用とその負担元です。ケーブルを入溝する事業は、電線共同溝で工事費の一部を負担します。 これに対して、情報BOXでは工事費は負担しません。 これらを個々に覚える手もありますが、双方の方式の特徴を押さえることで話の流れをつくることもできます。
電線共同溝は、道路管理者が計画段階で、電線共同溝を使用する事業者を募る方式です。 事業者は計画にも参画するため、工事費の一部を負担するのは、自然な流れです。 さらに一歩踏み込むと、後から使いたいという事業者が出た場合の対応もポイントになることが想像できます。 後から手を挙げた事業者は、電線共同溝を使えるのか、使えないのか、です。 答は「電線共同溝の収容能力に余裕がある場合、道路管理者は当初の占用予定事業者以外の事業者に占用の許可を与えることもできる。」、 つまり有料で使えるが答になります。
電線共同溝に対して情報BOXは、元々は道路管理者が自分のために作った設備です。 その設備に空き空間があるから、他の事業者に有料で使わせているわけです。 したがって、事業者がランニングコストを負担することはあっても、イニシャルコストを負担することはありえません。 もし情報BOXの利用者が工事費を負担するような記述があったら、×と判断できるのです。
過去問の個々の問題文を精査するのも大切ですが、ときには俯瞰的に振り返ってみてください。 より効率的に理解し記憶する道が開けることもあります。