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2016年 2月 8日
平成27年度第2回(2016年1月実施)電気通信主任技術者試験の「交換」の問1(1)の文章題の過去問です。
共通線信号方式は、「交換」ならではのテーマです。 「伝送交換設備及び設備管理」では、平成20年第1回に出題がありましたが、それ以降の出題はありません。
出題は、下のとおりです。アンダーラインの部分の(ア)~(エ)に適した番号を選ぶ問題です。
No.7共通線信号方式においてSCCPは、交換機と(ア)間においてアプリケーション信号情報を転送するために仕様化されており、通常の呼制御用信号以外の汎用的なデータ転送を行う機能を提供している。 また、SCCPはNo.7共通線信号方式の機能構成モデルにおいて(イ)の上位レベルに位置している。
SCCPのメッセージ転送に使用されるアドレスとしては、グローバルタイトル、 (ウ)及び信号局コードの3種類があり、このうちグローバルタイトルは、例えばダイヤル情報のようなアドレスで、最終的には信号局コードなどに変換される。また、(ウ)は、SCCP管理部など、信号局内の特定SCCPユーザ機能を示すものであり、一般に、グローバルタイトルや信号局コードと組み合わせて用いられる。
SCCPが上位レイヤに対して提供するサービス機能は、論理的なコネクションの設定の有無により二つに分類される。論理的なコネクションを設定することなしに個々のデータを独立に転送するサービスは、コネクションレスサービスといわれる。
SCCPのコネクションレスサービスを利用するために、特定のアプリケーションに依存しない転送及び管理機能を提供するトランザクション機能応用部(TCAP)が仕様化されている。TCAPの上位レイヤには、主にインテリジェントネットワークサービスに利用されるINAP(Intelligent Network Application Protocol)、移動通信網においてハンドオフやローミングをサポートするために用いられる(エ)などがある。
① GTP | ② STP | ③ UDP | ④ プロバイダ |
⑤ MAP | ⑥ TCP | ⑦ DSS1 | ⑧ データベース |
⑨ MTP | ⑩ TUP | ⑪ ISUP | ⑫ シーケンス番号 |
⑬ サブシステム番号 | ⑭ デジタルPBX | ||
⑮ プロトコルクラス | ⑯ トランザクションID |
(ア) ⑧ データベース | (イ) ⑨ MTP |
(ウ) ⑬ サブシステム番号 | (エ) ⑤ MAP |
No.7共通線信号方式においてSCCPは、交換機とデータベース間においてアプリケーション信号情報を転送するために仕様化されており、通常の呼制御用信号以外の汎用的なデータ転送を行う機能を提供している。 また、SCCPはNo.7共通線信号方式の機能構成モデルにおいてMTPの上位レベルに位置している。
SCCPのメッセージ転送に使用されるアドレスとしては、グローバルタイトル、 サブシステム番号及び信号局コードの3種類があり、このうちグローバルタイトルは、例えばダイヤル情報のようなアドレスで、最終的には信号局コードなどに変換される。また、サブシステム番号は、SCCP管理部など、信号局内の特定SCCPユーザ機能を示すものであり、一般に、グローバルタイトルや信号局コードと組み合わせて用いられる。
SCCPが上位レイヤに対して提供するサービス機能は、論理的なコネクションの設定の有無により二つに分類される。論理的なコネクションを設定することなしに個々のデータを独立に転送するサービスは、コネクションレスサービスといわれる。
SCCPのコネクションレスサービスを利用するために、特定のアプリケーションに依存しない転送及び管理機能を提供するトランザクション機能応用部(TCAP)が仕様化されている。TCAPの上位レイヤには、主にインテリジェントネットワークサービスに利用されるINAP(Intelligent Network Application Protocol)、移動通信網においてハンドオフやローミングをサポートするために用いられるMAPなどがある。
この問題は、ほぼ初登場となります。「ほぼ初」というのは、(エ)の「MAP」というキーワードは、 誤った記述の選択肢を除けば、平成13年(2001年)度以降で登場回数ゼロなのです。それ以前は不明ですが、 過去問を10年分以上やることはあまりないと思いますので、問題自体は初登場とみなしてよいかと思います。
表題にある共通線信号方式とは、制御用に使う局間信号の方式のひとつです。 共通線信号方式では、通話線とは独立した局間信号専用の信号線を設けます。 局間信号専用の信号線は、多数の通信回線によって共通に使われるため、共通線と呼ばれます。 この共通線を使った局間信号方式が、共通線信号方式です。 ちなみに、共通線信号方式が登場する前は、局間信号は通話線に重畳して送られていました。この方式は、 局間信号を個々の通話線を使って転送するので、個別線信号方式と呼ばれます。
信号接続制御部(SCCP)の出題は、平成26年度第2回(2015年1月実施)問1(1)にもありました。 しかし、問われてる言葉は4個中3個が異なっています。ご参考に、下が穴埋め済みの全文です。 アンダーラインの部分が、穴になっていた部分です。
No.7信号方式採用前の局間信号方式は、交換機間の信号回線の設定、 解放などの基本的な接続処理の実現を主な目的としてきたが、No.7信号方式は、 単に回線を接続処理するだけの機能に加えて各種機能を付加した高度なサービスの要求に応えるものとして標準化された。 その中で、サービスの高度化要求と通信網構成技術の進展を背景に、 交換機とデータベース間においてアプリケーション信号情報の転送を可能とするため、SCCPが仕様化されている。
SCCPは、No.7共通線信号網を用いて通常の呼制御用信号以外の各種の信号や汎用的なデータ転送を行う機能を提供しており、 No.7信号方式の機能構造モデルにおいてMTP(メッセージ転送部)の上位レベルに位置し、 MTPとSCCPを組み合わせることにより、OSI参照モデルで定義されるレイヤ1からレイヤ3までに相当する機能が実現されている。
SCCPが上位レイヤに対して提供するサービス機能には四つのプロトコルクラスが用意されており、 クラス2及びクラス3はコネクションオリエンテッド型の転送機能を提供する。 SCCPのメッセージ転送に使用されるアドレスとしては、グローバルタイトル、 サブシステム番号及び信号局コードの3種類があり、このうちグローバルタイトルは、 例えばダイヤル情報のようなアドレスで、最終的にはサブシステム番号や、信号局コードに変換される。
まず1つ目の段落です。
No.7共通線信号方式においてSCCPは、交換機とデータベース間においてアプリケーション信号情報を転送するために仕様化されており、通常の呼制御用信号以外の汎用的なデータ転送を行う機能を提供している。 また、SCCPはNo.7共通線信号方式の機能構成モデルにおいてMTPの上位レベルに位置している。
共通線信号方式では、階層を「レイヤ」と呼ばずに「レベル」と呼びます。そしてレベルは、4階層になっています。
レベル | 名称 | 機能概要 |
---|---|---|
4 | ユーザ部 | 信号の送信および受信を行うための機能を提供する。 |
3 | 信号網機能部 | 宛先の信号局に、信号を転送する機能を提供する。 |
2 | 信号リンク機能部 | 信号を隣接する信号局に、誤りなく転送する機能を提供する。 |
1 | 信号データリンク部 | 信号を伝送するための電気的条件や物理的条件を定める。 |
レベル1からレベル3は、OSI参照モデルの第1層から第3層に、おおざっぱには対応しています。 レベル3以下は、まとめてMTP(メッセージ転送部)と呼ばれています。これが(イ)に入るキーワードです。
MTPの上位レベルは、レベル4です。共通線信号方式ではOSI参照モデルの第4層から第6層に対応するレベルはないので、 レベル4は第7層に対応します。ただし、後で説明しますが、第3層の機能を一部含んでいます。
レベル4 は、ユーザ部とも呼ばれます。ここでのユーザとは、通信アプリケーションを意味します。 たとえば、電話やファクシミリ通信などが該当します。
信号接続制御部(SCCP)は、回線接続処理以外のアプリケーションが、効率的に信号情報を交 換するためのユーザ部です。SCCP により、交換機間および交換機とデータベース間での情報のやりとりを、 効率的に行うことができます。 この「データベース」が(ア)の解答になります。
ユーザ部の下にあるMTPですが、実はOSIの第3層と対応付けると機能が少々不足しています。 MTPにSCCPの機能を合わせることで、第3層相当の機能となります。上の図には、その様子を示してあります。
2つ目の段落です。
SCCPのメッセージ転送に使用されるアドレスとしては、グローバルタイトル、 サブシステム番号及び信号局コードの3種類があり、このうちグローバルタイトルは、例えばダイヤル情報のようなアドレスで、最終的には信号局コードなどに変換される。また、サブシステム番号は、SCCP管理部など、信号局内の特定SCCPユーザ機能を示すものであり、一般に、グローバルタイトルや信号局コードと組み合わせて用いられる。
SCCPでは、以下の3種類のアドレスが使われます。
この中で、中心となるのが、1点目のグローバルタイトルです。グローバルタイトル≒電話番号と考えてください。 信号接続制御部(SCCP)でのルーチングは、グローバルタイトルが中心的役割を果たす方式なので、 グローバルタイトルルーチングと呼ばれています。
2点目のサブシステム番号のサブシステムとは、レベル4のデータ部におけるサブシステムです。 具体的には、上の図にある電話ユーザ部(TUP)、ISDNユーザ部(ISUP)、信号接続制御部(SCCP)が該当します。 MTPが転送したとき、宛先のユーザ部で転送先のサブシステムを識別するものです。 このサブシステム番号が、 (ウ)の解答です。
3点目の信号局コードの信号局とは、メッセージの送信、転送または受信を行う局のことです。 宛先の信号局を知るために、随時、グローバルタイトルから信号局コードへの翻訳が行われます。
3つ目の段落です。
SCCPが上位レイヤに対して提供するサービス機能は、論理的なコネクションの設定の有無により二つに分類される。論理的なコネクションを設定することなしに個々のデータを独立に転送するサービスは、コネクションレスサービスといわれる。
SCCPには、4つのプロトコルクラスがあります。プロトコルクラスの概要を、下に示します。
レベル | コネクション | 順序制御 | その他の機能 |
---|---|---|---|
0 | コネクションレス | なし | |
1 | |||
2 | コネクション オリエンテッド |
||
3 | あり | フロー制御機能、優先データ機能 メッセージ紛失と順序異常の検出機能 |
今回の出題では、問題の文章で触れられている話題ですが、穴埋めにはなっていない部分です。 なお、平成26年度第2回(2015年1月実施)問1(1)では、プロトコルクラス2と3についての出題がありました。
最後の4つ目の段落です。
SCCPのコネクションレスサービスを利用するために、特定のアプリケーションに依存しない転送及び管理機能を提供するトランザクション機能応用部(TCAP)が仕様化されている。TCAPの上位レイヤには、主にインテリジェントネットワークサービスに利用されるINAP(Intelligent Network Application Protocol)、移動通信網においてハンドオフやローミングをサポートするために用いられるMAPなどがある。
機能名の一部にある「トランザクション」ですが、一般には分割不可能な処理単位という意味合いです。 この場合は、開始、終了、異常による放棄などの処理単位が該当します。
トランザクション機能応用部(TCAP:Transaction Capabilities Application Part)とは、問題文にあるように「特定のアプリケーションに依存しない転送及び管理機能を提供する」ための機能です。 上の図では、トランザクション機能部(TC:Transaction Capabilities)と書かれている部分です。なぜ名称が異なるかというと、以前はTCAPに他の機能を追加したものを、TCと呼んでいました。 つまり、TCAP+α=TCです。ところが、SCCPの仕様変更により両者の違いがほとんどなくなり、1993年のITU-T勧告ではTCAPとTCを同じ位置づけの用語として扱うようになりました。
図にあるTCユーザは、TC≒TCAPを使う側の機能です。TCユーザの代表的な具体例が、次の3つです。
INAPは、インテリジェントネットワーク(IN)のためのユーザ部です。 インテリジェントネットワークとは、新しい電話サービスや機能の導入が簡単に導入できる柔軟性を提供する電気通信ネットワークのことです。 インテリジェントネットワークが採用するINアーキテクチャでは、電話網など通信網から、高度な通信サービス機能やそネットワーク制御機能を分離します。 そして、通信網を集中的に制御するコンピュータにより、通信網外部から交換機の動作を制御します。
MAPは、移動通信体のためのユーザ部です。GMSやUTMSなどのモバイルコアネットワークのための機能です。 このMAPが、(エ)の解答です。知らないと答えようのない問題のようですが、少々攻める隙はあります。 仮に答えを英字の略称とすると、「移動体通信網」とあるので、"Mobile"が入っている可能性大です。すると候補は、「⑤ MAP」と「⑨ MTP」の2つです。 MTPは共通線信号方式の重要キーワードなので、消去法で「⑤ MAP」が残ります。選択問題ならではの、荒技です。略称を見るときに、普段から 元の英語を見ておくと、その経験をこのようにも使えます。
CAPは、CAMEL用のユーザ部です。ここでCAMELとは、インテリジェントネットワークにおいて呼制御を行うためのプロトコルです。
今回の出題と1年前の出題で同じ部分は、(ア)の「データベース」でした。 交換機とサーバ上で動作するデータベースという組み合わせは、正確な知識がなければ出にくいところです。 交換機の通信相手という視点で短絡的に言葉を選ぶと、機能が近いデジタルPBXや、 信号端局に直接つながっている加入者線の信号方式であるDSS1などが、気になってきます。 しかし、よく考えれば、デジタルPBXも加入信号方式も、共通線信号網の外です。正解とはなり得ません。
確信のある正解が見つからないときに、ある程度、答えを想像するのは止むを得ないことです。 しかし、その際は、必ずその答えを俯瞰的な視点で振り返ってください。よく考えれば、不正解(または、かなり怪しい)と感じられることは、 よくあります。 振り返りが不正解への一歩を止めてくれることがあるのです。
(イ)と(ウ)については、キーワードだけならば、1年前の問題文に入っています。つまり、 問題自体は初登場でも、1年前の過去問を穴埋め以外の部分も含めて整理しておけば、答えられた範囲です。 電気通信主任技術者試験の文章題は、過去問がコピペ状態で出てくるケースは稀です。元の文章がほぼ同じでも、 (イ)と(ウ)のように穴を空ける位置を変えてくることがあります。
過去問に取り組む際は、 答えを覚えるだけでは不十分です。周りのキーワードも含めて、またできればその文章の主旨の背景も含めて、 整理してください。そうすれば少々の問題の変化にも、対応できるはずです。
このページの図は、日本理工出版会刊「伝送交換設備及び設備管理-専門科目(伝送・交換)にも対応」の一部を、 著作者と出版社の許諾を得て使用しています。